○拡声機による暴騒音の規制に関する条例

平成四年一〇月一二日

条例第一五三号

拡声機による暴騒音の規制に関する条例を公布する。

拡声機による暴騒音の規制に関する条例

近年、拡声機の性能の向上により、大きな音量による放送宣伝活動が可能となったことに伴い、一部に、拡声機を使用し、必要な音量を著しく超える音を発して、通常の政治活動、労働運動、企業活動等の諸活動を妨害し、又はひぼうする等の街頭宣伝を行う団体が少なからずみられるようになり、こうした街頭宣伝がこれら諸活動に重大な支障を及ぼすとともに、地域住民に対して耐え難い苦痛をもたらすという事態が生じている。こうした事態は、我が国の政治経済機能の集中する首都東京において最も顕著であり、都民の日常生活を脅かすこれらの騒音の発生を防止することが強く求められている。

しかしながら、拡声機の使用は、政治活動等における表現の伝達等のための重要な手段でもあるのであって、法令及び健全な社会常識の範囲内で行われるものが不当に制限されることがあってはならないこともまた、言うを待たないところである。

このような認識の下に、日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制約することがないよう慎重に留意しつつ、拡声機によって発せられるいわば音の暴力ともいうべき騒音について必要な規制を行うこととし、この条例を制定する。

(趣旨)

第一条 この条例は、拡声機による暴騒音が人の身体の安全、業務の円滑な遂行等に重大な支障を及ぼしていることにかんがみ、拡声機により暴騒音を生じさせる行為の規制その他の拡声機による暴騒音の発生を防止するために必要な事項について定めるものとする。

(適用上の注意)

第二条 この条例の適用に当たっては、集会、結社及び表現の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制約しないようにしなければならない。

(定義)

第三条 この条例において「暴騒音」とは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該音を生じさせる装置から十メートル以上離れた地点(当該装置が道路その他の公共の場所以外の場所において使用されている場合にあっては、当該場所の外の地点に限る。)において測定したものとした場合における音量が八十五デシベルを超えることとなる音をいう。

(適用除外)

第四条 この条例の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。

 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の定めるところにより選挙運動又は選挙における政治活動を行うために拡声機を使用する場合

 災害、事故等が発生した場合において、人の生命、身体又は財産に対する危害を防止するために拡声機を使用するとき。

 国又は地方公共団体の業務を行うために拡声機を使用する場合

 電気、ガス、水道又は電気通信の事業に係る緊急の広報活動を行うために拡声機を使用する場合

 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校、専修学校若しくは各種学校又は児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)に規定する児童福祉施設における授業その他の業務を行うために拡声機を使用する場合

 公共輸送機関における輸送業務を行うために拡声機を使用する場合

 祭礼、運動会その他の地域の行事を行うために拡声機を使用する場合

 前各号に掲げるもののほか、公共の利益を実現するために拡声機を使用する場合として東京都公安委員会規則で定める場合

(拡声機により暴騒音を生じさせる行為の禁止)

第五条 何人も、拡声機により暴騒音を生じさせてはならない。

(拡声機の使用を要求し、又は依頼する者等の義務)

第六条 何人も、他の者に対し、拡声機の使用を要求し、若しくは依頼するとき、又は自己の管理に係る拡声機を使用させるときは、その者にこの条例に規定する事項を遵守させるように努めなければならない。

(拡声機により暴騒音を生じさせる行為をした者に対する措置等)

第七条 警察官は、第五条の規定に違反する行為(以下「違反行為」という。)が行われているときは、当該違反行為をしている者に対し、当該違反行為を中止することを命ずることができる。

2 警察署長は、違反行為をした者が更に継続し、又は反復して違反行為をしたときは、その者に対し、二十四時間を超えない範囲内で時間を定めて、違反行為が行われることを防止するために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

3 警察署長は、前項の規定による命令を受けた者が更に違反行為をしたときは、その者に対し、その者が使用し、又は使用しようとしている拡声機(拡声機が自動車等に取り付けられている場合において、当該拡声機を当該自動車等から容易に取り外すことができないときにあっては、当該拡声機及び当該自動車等。次項において同じ。)の提出を命じ、これを保管することができる。

4 警察署長は、前項の規定により拡声機を保管したときは、当該拡声機を保管した時から起算して二十四時間を経過した時(当該時間内において当該拡声機を保管する必要がなくなった場合にあっては、当該拡声機を保管する必要がなくなった時)以後速やかに、同項に規定する者に対し、当該拡声機を返還するものとする。

5 前各項の規定は、二以上の者が近接した場所で拡声機を使用することにより複合して暴騒音が生じたとき(これらの者が共同して近接した場所で拡声機を使用した場合を除く。次条において同じ。)については、適用しない。

第八条 警察署長は、二以上の者が近接した場所で拡声機を使用することにより複合して暴騒音が生じたときは、これらの者に対し、拡声機による暴騒音の発生を防止するために必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

(拡声機の使用を要求し、又は依頼した者等に対する措置)

第九条 警察署長は、違反行為が行われた場合において、当該違反行為を行った者に対し当該違反行為に係る拡声機の使用を要求し、若しくは依頼した者又は当該違反行為に係る拡声機を管理する者で、自己の用務のために当該拡声機を使用させたものが、違反行為が行われることを防止するために必要な措置を講じていると認められないときは、これらの者に対し、拡声機を使用する者が拡声機の使用に関し違反行為をすることを防止するために必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。

(立入り等)

第十条 警察署長は、第七条又は第八条の規定の施行に必要な限度において、警察官に拡声機が所在すると認められる場所(拡声機が取り付けられている自動車等を含む。)に立ち入り、拡声機その他の必要な物件を検査させ、又は拡声機を使用し、若しくは使用しようとしている者その他の関係者に対し質問させることができる。

2 警察官は、前項の規定による立入検査をするときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(東京都公安委員会規則への委任)

第十一条 この条例に定めるもののほか、この条例の実施のための手続その他この条例の施行に関し必要な事項は、東京都公安委員会規則で定める。

(罰則)

第十二条 第七条第一項から第三項までの規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

第十三条 第十条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者は、十万円以下の罰金に処する。

この条例は、公布の日から起算して七日を経過した日から施行する。

拡声機による暴騒音の規制に関する条例

平成4年10月12日 条例第153号

(平成4年10月12日施行)