○東京都船舶の係留保管の適正化に関する条例

平成一四年三月二九日

条例第九八号

東京都船舶の係留保管の適正化に関する条例を公布する。

東京都船舶の係留保管の適正化に関する条例

(目的)

第一条 この条例は、船舶の係留保管の秩序を確立することにより、都市景観の回復及び創出を図るとともに、都民の暮らしの安全性の保持並びに公共水域を利用した経済活動及び公共水域周辺の良好な生活環境の確保に資することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 船舶 人又は貨物を積載し、自航、えい航を問わず、水面を移動するために用いられる物をいう。

 係船 船舶を、さん橋、係留くい若しくは係船浮標等を用いて固定し、又は当該船舶の運転をする者がその船舶を離れて、直ちに移動できない状態で、水面に置くことをいう。

 係留保管 船舶を、水面においては常時係船し、陸上の土地においては船台等に常時定置することをいう。

 係留保管施設 係留保管の用に供するために、国、地方公共団体、その他係留保管を行う水面又は陸上の土地に正当な権原を有する者が設置した施設及びその水面又は陸上の土地をいう。

 係留保管施設等 係留保管施設又は所有者等が係留保管をする正当な権原を有する水面若しくは陸上の土地をいう。

 係留保管場所 係留保管施設その他係留保管をするための場所をいう。

 放置 係留保管施設等及び所有者等が係留保管又は係船をする正当な権原を有する水面以外の、公共水域に係船することをいう。

 所有者等 船舶の所有者その他船舶を使用する権利を有する者で、自己のために船舶を運行の用に供するもの(以下「保有者」という。)をいう。ただし、船舶の保有者が不明の場合は、当該船舶の占有者をいう。

 事業者 船舶の製造、販売、輸入又は係留保管を業とする者をいう。

(都の責務)

第三条 東京都(以下「都」という。)は、船舶の係留保管の適正化を図るため、国、隣接する県及び市並びに関係する特別区及び都内の市町村等(以下「関係団体等」という。)との連携を確保しつつ、総合的な施策を推進するものとする。

2 都は、関係団体等と連携して、所有者等が適正な係留保管を行うよう、指導するものとする。

(所有者等の責務)

第四条 所有者等は、自らの責任において係留保管施設等を確保し、船舶の適正な管理に努めなければならない。

2 所有者等は、公共水域等に関する法令等を遵守するとともに、公共水域の周辺の生活環境及び都市景観の保全に配慮し、船舶の適正な利用に努めなければならない。

(事業者の責務)

第五条 事業者は、都が実施する船舶の係留保管の適正化に関する施策に協力しなければならない。

2 事業者は、所有者等に対し、適正な係留保管に関する啓発、情報の提供その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(係留保管適正化計画)

第六条 知事は、係留保管の適正化を総合的に推進するため、船舶の係留保管の適正化に関する計画(以下「係留保管適正化計画」という。)を定め、これを公表しなければならない。

2 係留保管適正化計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。

 船舶の放置の防止に関する事項

 係留保管施設の整備に関する事項

 その他船舶の係留保管の適正化の推進に関する重要事項

(適正化区域の指定)

第七条 知事は、次に掲げる区域のうち、当該区域及びその周辺区域の係留保管施設の整備状況を勘案し、船舶の係留保管の適正化を特に図る必要がある区域を、適正化区域として指定することができる。

 災害時(地震、大規模な火災その他の災害が発生し、又はまさに発生しようとしているときをいう。以下同じ。)における船舶による円滑な避難、輸送等を確保するために必要な区域

 船舶の放置により、騒音、悪臭等が発生し、又は防火、防犯等の面での安全性が低下する等、周辺の地域の住民の良好な生活が阻害されている区域

 港湾における船舶を利用した経済活動を確保するために必要な区域

2 知事は、前項の規定により適正化区域を指定する場合には、その旨及びその区域を告示しなければならない。

3 適正化区域の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。

4 知事は、必要があると認めるときは、適正化区域を変更し、又はその指定を解除することができる。

5 第二項及び第三項の規定は、前項の規定による適正化区域の変更及びその指定の解除について準用する。

(重点適正化区域の指定)

第八条 知事は、適正化区域のうち次に掲げる区域を、重点適正化区域として指定することができる。

 災害時における船舶による避難又は応急措置の実施に必要な物資の輸送(以下「船舶による避難等」という。)の拠点又は経路として特に重要であると認められる区域

 船舶の放置に起因して、周辺の地域の住民に治安及び防犯の面での危険性が生じており、その是正が特に必要であると認められる区域

 正当な権原なく設置された係留保管の用に供する施設に起因して、騒音、悪臭、水質の汚濁等が発生し、生活環境の著しい悪化が生じており、その是正が特に必要であると認められる区域

 船舶の燃料、廃油等の違法な貯蔵又は投棄に起因して、周辺の地域の火災発生の危険性が生じており、その是正が特に必要であると認められる区域

 岸壁、さん橋等の前面、泊地その他船舶の航行又は利用が多い区域で、海上保安上特に重要であると認められる区域

2 前条第二項から第四項までの規定は、重点適正化区域の指定、その区域の変更及び指定の解除について準用する。

(禁止行為)

第九条 何人も、適正化区域内において、船舶を放置してはならない。

2 何人も、適正化区域内の水面(係留保管施設等を除く。)を、係留保管場所として使用してはならない。

(指導及び警告)

第十条 知事は、適正化区域内に放置されている船舶の所有者等に対し、当該船舶を係留保管施設等に移動するよう指導することができる。

2 知事は、前項の規定による指導に従わない所有者等に対し、当該船舶を係留保管施設等に移動するよう警告することができる。

(船舶の移動)

第十一条 知事は、前条第二項の規定による警告を受けた者がその警告に従わないとき、又は緊急の必要があるときは、重点適正化区域内に放置されている船舶を、その職員に、あらかじめ知事が定めた場所に移動させることができる。

2 知事は、前項の規定による移動を行うため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その職員に、船舶に立ち入らせることができる。

3 第一項の規定による移動を行わせようとする場合においては、知事が、あらかじめ所有者等に対し、当該移動に係る意見を述べる機会を与えることを妨げない。

(移動した船舶に対する措置)

第十二条 知事は、前条第一項の規定により船舶を移動させたときは、当該船舶を保管しなければならない。

2 知事は、前項の規定により船舶を保管したときは、当該船舶の所有者等に対し、その保管を始めた日時及び保管の場所並びに当該船舶を速やかに引き取るべき旨を東京都規則(以下「規則」という。)で定めるところにより通知し、その他当該船舶をその所有者等に返還するため規則で定める必要な措置を講じなければならない。

3 知事は、前項の規定による通知が所有者等に到達した日から起算して六月を経過してもなお、第一項の規定により保管した船舶を所有者等に返還することができない場合で、次の各号のいずれかに該当するときは、当該船舶を売却し、その代金を保管することができる。

 規則で定めるところにより評価した当該船舶の価額に比し、その保管に不相当な費用を要するとき。

 当該船舶が滅失し、又は破損するおそれがあるとき。

4 知事は、前項の規定により船舶を売却しようとするときは、あらかじめ、次条第一項に規定する保管船舶処理委員会の意見を聴かなければならない。

5 知事は、前項の規定により保管船舶処理委員会の意見を聴こうとするときは、あらかじめ、第三項の規定により売却しようとする船舶の所有者等(当該船舶の所有者等が当該船舶の所有者でない場合にあっては、当該船舶の所有者を含む。)に対し、当該船舶を売却し、その売却した代金を保管する旨を規則で定めるところにより通知するとともに、当該売却に係る意見を述べる機会を与えなければならない。

6 知事は、第二項の規定による通知が所有者等に到達した日から起算して六月を経過してもなお、第一項の規定により保管した船舶を所有者等に返還することができない場合で、当該船舶がその本来の用途に供することが困難な状態にあり、かつ、規則で定めるところにより評価した当該船舶の価額が著しく低いときは、当該船舶を廃棄することができる。

7 第四項及び第五項の規定は、前項の規定による船舶の廃棄について準用する。この場合において、第五項中「売却し、その売却した代金を保管する」とあるのは「廃棄する」と読み替えるものとする。

(保管船舶処理委員会)

第十三条 知事が前条第三項の規定による売却及び同条第六項の規定による廃棄を行うに当たって必要な調査審議を行い、意見を述べる知事の附属機関として、保管船舶処理委員会(以下「委員会」という。)を置く。

2 委員会は、次に掲げる者につき、知事が委嘱する委員七人以内をもって組織する。

 船舶について専門的知識を有する者

 学識経験を有する者

3 委員の任期は、二年とし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。

4 前三項に定めるもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(移動、保管等の費用の負担)

第十四条 第十一条第一項の規定による船舶の移動、第十二条第一項の規定による船舶の保管及び同条第三項の規定による船舶の売却に要した費用は、規則で定めるところにより、当該船舶の所有者等の負担とする。

(立入調査)

第十五条 知事は、第十条第一項の規定による指導又は同条第二項の規定による警告を行うため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その職員に、放置されている船舶に立ち入り、当該船舶の所有者等を確認するため必要な調査をさせることができる。

2 前項に規定する権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(証明書の携帯等)

第十六条 第十一条第一項の規定により船舶の移動を行う職員及び前条第一項の規定により立入調査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

(公表)

第十七条 知事は、第十条第二項の規定による警告を受けた所有者等が、正当な理由がなく、当該警告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。

2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該警告を受けた所有者等に対し、あらかじめ、意見を述べる機会を与えなければならない。

(広報、啓発等)

第十八条 都と関係団体等及び事業者とは連携して、所有者等に対し、その責務について自覚を促すため、船舶に係る法令及び利用上の基本的な条件について周知させる等、広報活動及び啓発活動に努めるものとする。

(委任)

第十九条 この条例に規定するもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。

(罰則)

第二十条 第九条第二項の規定に違反して重点適正化区域内の水面(係留保管施設等を除く。)を係留保管場所として使用し、よって災害時における船舶による避難等を妨げた者は、五十万円以下の罰金に処する。

第二十一条 第九条第一項の規定に違反して重点適正化区域内において船舶を放置し、よって災害時における船舶による避難等を妨げた者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の過料に処する。

 第九条第二項の規定に違反して適正化区域内の水面(係留保管施設等を除く。)を係留保管場所として使用した者

 詐欺その他不正の行為により、第十四条の規定による移動、保管又は売却に要した費用の負担を免れた者

第二十三条 第十五条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、三万円以下の過料に処する。

この条例は、平成十五年一月一日から施行する。

東京都船舶の係留保管の適正化に関する条例

平成14年3月29日 条例第98号

(平成15年1月1日施行)