○東京都住宅基本条例
平成一八年一二月二二日
条例第一六五号
東京都住宅基本条例を公布する。
東京都住宅基本条例
東京都住宅基本条例(平成四年東京都条例第百九号)の全部を改正する。
目次
前文
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 基本的施策(第七条―第十六条)
第三章 東京都住宅マスタープランの策定等(第十七条―第十九条)
第四章 東京都住宅政策審議会(第二十条・第二十一条)
附則
住宅は、生活の基盤であると同時に、都市を形づくる基本的な要素である。住宅のありようは、都民生活の質はもとより、都市の活力や景観、地域社会の維持形成とも密接に関連している。
住宅は、このように単なる私的財にとどまらず、社会的な性格を有している。経済的活力や文化的魅力とあいまって、居住の場としての魅力を高めていくことが、都市社会に活力と安定をもたらし、東京の持続的な発展に寄与するものである。われわれ都民は、東京の貴重な都市空間を合理的に分かち合うとともに、良好な都市環境を将来の世代に引き継いでいくことが必要であるとの考え方に立って、基本的人権が尊重されるとともに社会的公正が実現され、共に支え合い、安全に、安心して住み続けられる社会を築いていかなければならない。
このためには、地域からの発想を重視しながら、良質な住宅のストックと良好な住環境の形成を促進し、都民が適切に住宅を選択できるよう市場の環境を整備し、及び住宅に困窮する都民の居住の安定の確保を図る、総合的な住宅政策の確立が不可欠である。
われわれ都民は、このような認識の下、居住の場としても魅力的な東京の実現を目指すことをここに宣言し、東京にふさわしい住宅政策の目標とその基本的方向を明らかにするため、この条例を制定する。
第一章 総則
(住宅政策の目標)
第一条 東京都(以下「都」という。)の住宅政策の目標は、すべての都民がその世帯の構成に応じて、良好な住環境の下で、ゆとりある住生活を享受するに足りる住宅を確保できるようにすることにあるものとする。
一 公共住宅 次に掲げる住宅をいう。
イ 都、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)又は東京都住宅供給公社(以下「公社」という。)が供給する賃貸住宅
ロ 住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保を目的として供給される民間賃貸住宅(賃貸住宅の管理を行うために必要な能力等に関し知事が定める基準を満たす法人が供給し、又は公社若しくは当該法人が管理を受託するものに限る。)であって、その供給に当たり都又は区市町村から補助が行われるもの
二 都営住宅等 都又は公社が所有する公共住宅をいう。
三 住宅関連事業者 住宅の建設、売買、賃貸、取引の媒介、改修又は管理その他住宅に関連した事業を業として行う者をいう。
(都の責務)
第三条 都は、第一条の目標を実現するため、広域的な視点から、住宅に関する施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。
2 都は、安定した地域社会の形成及び地域住民の福祉の向上の視点から住宅に関する施策を実施する区市町村に対し、助言及び援助を行うよう努めなければならない。
3 都は、都民、まちづくりの推進を図る活動を行うことを目的として設立された特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項の特定非営利活動法人その他の者が行う住生活の安定向上に関する自主的な活動を促進するため、情報の提供、知識の普及等を行うよう努めるものとする。
(都民等の責務)
第四条 都民は、居住水準の向上及び良好な住環境の形成に努めなければならない。
2 事業主は、その雇用する勤労者の住生活の安定向上に努めなければならない。
3 住宅関連事業者は、良質な住宅の供給、良好な住環境の形成、住宅に係る適正な取引の推進等に努めなければならない。
(住宅に関する調査の実施等)
第五条 都は、住宅に関する施策の総合的な推進に資するため、住宅に関する調査を定期的に実施するとともに、住宅の需要及び供給、利用状況並びに価格及び家賃その他の住宅に関する動向等を明らかにした文書を作成し、及び公表するものとする。
(財源の確保)
第六条 都は、住宅に関する施策を実施するために必要な財源の確保に努めるものとする。
第二章 基本的施策
(公共住宅の供給等)
第七条 都は、都民の居住の安定の確保を図るため、公共住宅の公平かつ的確な供給を図るよう努めるものとする。
2 都は、公共住宅の供給に当たっては、高齢者、障害者、子育てをしている世帯等の入居の促進に配慮するものとする。
3 都は、都営住宅等の供給に当たっては、将来の人口及び世帯数の見通し等を踏まえ、計画的な修繕、改修、建替え等により、既存の都営住宅等の活用を促進するよう努めるものとする。
4 都は、都営住宅等の建替え等に当たっては、地域のまちづくりに資するよう、当該住宅の用地の活用の促進等に努めるものとする。
5 都は、都営住宅等の供給及び前項の用地の活用の促進に当たっては、多様な世帯が居住する活力ある地域社会の形成を促進するよう配慮するものとする。
6 都は、地域住民の居住の安定の確保に関し区市町村が果たす役割の重要性にかんがみ、公共住宅の供給に関する区市町村の主体的な取組を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(良質な住宅のストックの形成)
第八条 都は、現在及び将来における都民の住生活の基盤となる良質な住宅のストックの形成を図るため、住宅の地震に対する安全性の確保の促進、環境に配慮した構造及び設備を備えた住宅の整備の促進その他良質な住宅の整備及び管理を促進するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(良好な住環境を備えた住宅市街地の形成等)
第九条 都は、良好な住環境を備えた住宅市街地の形成を図るため、老朽化した木造住宅等が密集する地域の整備改善等による災害に対する安全性の確保の促進、景観の維持向上その他必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
2 都は、地域の特性に応じ、土地の合理的利用の促進を図りつつ、既成市街地における居住機能の維持又は増進のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(マンションの管理の適正化及び建替え等の円滑化)
第十条 都は、多数の区分所有者等が居住するマンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十九号)第二条第一号のマンションをいう。)の特性にかんがみ、その管理の適正化及び建替え等の円滑化のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(住宅に係る取引の安全及び合理的な選択の確保)
第十一条 都は、都民の住宅に係る取引の安全及び合理的な選択の確保を図るため、住宅に関する適切な情報の提供及び相談の実施の促進、住宅関連事業者による適正な事業活動の確保の促進その他必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(既存住宅の流通の促進)
第十二条 都は、良質な住宅の長期にわたる活用の促進、世帯構成の変化等に応じた住み替えの円滑化等に資するよう、既存住宅の流通の促進のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(地域の住宅関連事業者の活力の増進)
第十三条 都は、都民の住宅に係る選択肢の拡大、住宅の適切な改修等に資するよう、地域において住宅の建設等を行う事業者の技術力の向上、都内において生産される木材の住宅への使用の促進その他地域の住宅関連事業者の活力の増進のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(住宅に関する技術開発の促進等)
第十四条 都は、住宅の品質又は性能の向上、住宅の価格の低廉化等に資するよう、住宅に関する技術開発及び先導的な事業の促進その他必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(民間住宅における居住の安定の確保)
第十五条 都は、高齢者、障害者、子育てをしている世帯等の民間住宅における居住の安定の確保を図るため、民間賃貸住宅への円滑な入居の促進、高齢者等が利用しやすい構造を備えた民間住宅の整備の促進、適切な規模の民間賃貸住宅の供給の促進その他必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
2 都は、前項の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に当たっては、年齢、障害、国籍等の理由により入居の機会が制約されることがないよう、賃貸人その他の関係者に対する啓発に努めるものとする。
(災害を受けた地域の復興等を図るための住宅の復旧の支援等)
第十六条 都は、地震その他の災害を受けた地域の復興等を図るため、応急住宅の供給の促進、住宅の復旧の支援その他必要な施策を講ずるものとする。
第三章 東京都住宅マスタープランの策定等
(東京都住宅マスタープランの策定)
第十七条 知事は、東京都住宅マスタープラン(この条例に定める住宅政策の目標及び基本的施策を具体化し、住宅に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる計画をいう。以下同じ。)を定めるものとする。
2 東京都住宅マスタープランにおいては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 計画期間
二 住宅政策の展開に当たっての基本的方針
三 良質な住宅のストック及び良好な住環境の形成、住宅市場の環境整備並びに都民の居住の安定の確保に関する目標
四 前号の目標を達成するために必要な住宅に関する施策
五 住宅市街地の整備の方向並びに住宅及び住宅地の供給を重点的に図るべき地域に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、住宅に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 東京都住宅マスタープランと第十九条の区市町村住宅マスタープランとは、調和が保たれたものとする。
4 知事は、東京都住宅マスタープランを定め、又は変更しようとするときは、東京都住宅政策審議会及び区市町村の意見を聴かなければならない。
5 知事は、都民の住宅の需要の動向その他経済社会情勢の変化に応じて、東京都住宅マスタープランの見直しを行うものとする。
(東京都住宅マスタープランの実現のために必要な措置の実施)
第十八条 都は、東京都住宅マスタープランの実現のため、住宅の供給及び住宅市街地の整備に関する制度の適切な運用、事業の実施及び情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(区市町村住宅マスタープランの策定に係る援助等)
第十九条 都は、区市町村が区市町村住宅マスタープラン(区市町村が当該区市町村の区域において、住宅に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる計画をいう。)を定め、又は変更しようとするときは、当該区市町村に対し、必要な助言及び援助を行うものとする。
第四章 東京都住宅政策審議会
(東京都住宅政策審議会)
第二十条 第十七条第四項の規定によりその権限に属させられた事項及び知事の諮問に応じ都における住宅政策に関する重要事項を調査審議させるため、東京都住宅政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、前項の重要事項について知事に建議することができる。
(審議会の組織)
第二十一条 審議会は、次に掲げる者につき、知事が任命する委員三十人以内をもって組織する。
一 学識経験を有する者 二十人以内
二 東京都議会議員 七人以内
三 区市町村の長の代表 三人以内
2 前項第一号の委員には、住宅及び住環境の整備に関する分野のほか、都市計画、社会福祉、消費者保護その他の住宅に関連する分野の学識経験を有する者を含むものとする。
3 委員の任期は、二年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。
4 審議会は、特定の事項を調査審議するため必要があると認めるときは、部会を置くとともに、関係者から意見又は説明を聴くことができる。
5 前各項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、知事が定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の際、改正前の東京都住宅基本条例(以下「旧条例」という。)第二十二条第一項の規定により置かれた東京都住宅政策審議会は、この条例第二十条第一項の規定により置かれた審議会となり、同一性をもって存続するものとする。
3 この条例の施行の際、旧条例第二十三条第一項の規定により東京都住宅政策審議会の委員に任命された者(以下「改正前の委員」という。)は、この条例第二十一条第一項の規定により審議会の委員に任命された者とみなし、その任期は、同条第三項の規定にかかわらず、それぞれ改正前の委員の残任期間とする。