○東京都水上安全条例

平成三〇年三月三〇日

条例第四六号

東京都水上安全条例を公布する。

東京都水上安全条例

東京都水上取締条例(昭和二十三年東京都条例第八十二号)の全部を改正する。

目次

第一章 総則(第一条―第五条)

第二章 船舶の航法等(第六条―第十条)

第三章 小型船舶の操縦者(第十一条―第十四条)

第四章 公安委員会による航行制限等(第十五条・第十六条)

第五章 水路使用の許可(第十七条・第十八条)

第六章 マリーナ事業者(第十九条―第二十二条)

第七章 雑則(第二十三条―第二十五条)

第八章 罰則(第二十六条・第二十七条)

附則

第一章 総則

(目的)

第一条 この条例は、水上における船舶交通に関する秩序を確立するとともに、船舶の航行に起因する障害及び危険を防止することにより、安全かつ快適な水上及び水辺の環境を実現することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 水上 船舶が航行することができる東京都(以下「都」という。)の区域内の河川の水面(島しょにおけるもの及び港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)が適用されるものを除く。)並びに港則法施行規則(昭和二十三年運輸省令第二十九号)別表第一に規定する京浜港東京区の港域内海面及び水面並びに同令別表第二に規定する京浜港の東京東航路及び東京西航路の区域内海面をいう。

 水路 水上のうち、港則法が適用されない水面をいう。

 沿岸 水上に沿った陸地をいう。

 水辺 沿岸及びその周辺の水上をいう。

 水域 水上の一定の区域をいう。

 船舶 水上輸送の用に供する船舟類をいう。

 小型船舶 船舶職員及び小型船舶操縦者法(昭和二十六年法律第百四十九号)第二条第四項の小型船舶をいう。

 プレジャーボート 小型船舶のうち、水上オートバイ、ヨット、モーターボートその他の動力船(推進機関を有する船舶をいう。)であって、専らレクリエーションその他の余暇を利用して行う活動の用に供されるものをいう。

 水上標識 船舶の航行に関し、規制又は指示を表示する標示物をいう。

(都の責務)

第三条 都は、この条例の目的を達するため、国、地方公共団体その他関係団体と相互に連携し、及び協力して、必要な施策を講ずるものとする。

(都民の責務)

第四条 都民は、都が講ずる前条の施策に協力するよう努めるものとする。

(警察官の質問等)

第五条 警察官は、この条例の目的を達するため、必要があると認めるときは、水上を航行する船舶に対し、その航行を停止させ、船舶の操縦者及び乗組員に対し、必要な質問をすることができる。

第二章 船舶の航法等

(右側航行)

第六条 水路を航行する船舶は、水路の右側端に寄って航行しなければならない。ただし、障害物を回避するときその他やむを得ないときは、この限りでない。

(停泊等の制限)

第七条 船舶は、水路において、みだりに他の船舶の航行の妨害となるおそれのある場所に停泊し、又は停留してはならない。

(工作物の突端等又は停泊船舶付近の航法)

第八条 船舶は、水路において、工作物の突端、桟橋又は停泊中の船舶を右舷に見て航行するときは、できるだけこれに近寄り、左舷に見て航行するときは、できるだけこれに遠ざかって航行しなければならない。

(灯火)

第九条 水路を航行する船舶(海上衝突予防法(昭和五十二年法律第六十二号。以下「予防法」という。)第二十三条に規定する航行中の動力船を除く。)は、日没から日出までの間又は霧、もや等の事由により視界が制限されている状態のときは、白色の携帯電灯又は点火した白灯を周囲から最も見えやすい場所に表示しなければならない。ただし、予防法第二十条第一項に規定する法定灯火を表示しているときは、この限りでない。

(救命胴衣の着用)

第十条 何人も、水上において、船舶安全法(昭和八年法律第十一号)第二条第二項に規定する船舶に乗船する際には、東京都公安委員会規則(以下「公安委員会規則」という。)で定めるときを除き、救命胴衣を着用するよう努めなければならない。

第三章 小型船舶の操縦者

(小型船舶の操縦者の遵守事項)

第十一条 小型船舶の操縦者は、水上において、次に掲げる事項を遵守しなければならない。

 自船の航行に起因する引き波(船舶の航行に伴い、当該船舶の後方に生ずる波をいう。)又は水しぶきにより、みだりに他の船舶の乗船者に迷惑を及ぼさないこと。

 水辺(沿岸を除く。)を航行するときは、海難を避けようとする等やむを得ないときを除き、周辺住民等の平穏な生活環境に配慮し、静穏を保持するために必要と認められる速力及び方法によること。

 工事、作業等を実施している水域又は係留されている船舶の付近を航行するときは、減速した上で、当該水域又は当該船舶から離れて航行する等の安全な方法によること。

(酒気帯び操縦の禁止)

第十二条 何人も、水上において、酒気を帯びて小型船舶を操縦してはならない。

(警察官の措置)

第十三条 警察官は、小型船舶に乗船し、又は乗船しようとしている者が、前条の規定に違反して小型船舶を操縦するおそれがあると認められるときは、次項の規定による措置に関し、その者が身体に保有しているアルコールの程度について調査するため、公安委員会規則で定めるところにより、その者の呼気の検査をすることができる。

2 警察官は、前項の検査を行った場合において、当該小型船舶の操縦者が前条の規定に違反して小型船舶を操縦するおそれがあるときは、その者が正常な操縦ができる状態になるまで小型船舶を操縦してはならない旨を指示する等、水上における危険を防止するため必要な応急の措置をとることができる。

(危険操縦の禁止)

第十四条 小型船舶の操縦者は、みだりに水上において、次の各号のいずれかに該当する操縦をしてはならない。

 他の船舶との間に安全な距離を保たないで、当該船舶の進路を横切ること。

 他の船舶との間に安全な距離を保たないで、蛇行し、又は急に転回すること。

 前二号に掲げるもののほか、他の船舶との衝突の危険を生じさせるような方法で、当該船舶に接近すること。

第四章 公安委員会による航行制限等

(公安委員会による航行制限等)

第十五条 東京都公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、この条例の目的を達するため、必要があると認めるときは、水上標識を設置し、及び管理して、水上において船舶の航行を制限し、又は禁止することができる。

2 公安委員会は、前項の規定により、船舶の航行を制限し、又は禁止しようとするときは、次に掲げる事項を告示するものとする。

 対象とする水域

 対象とする船舶の種類

 航行を制限し、又は禁止する内容

 航行を制限し、又は禁止する期間

 航行を制限し、又は禁止する理由

3 公安委員会は、水路以外の水上において、第一項の規定により、船舶の航行を制限し、又は禁止しようとするときは、あらかじめ港長と協議するものとする。

4 第一項の水上標識の種類、様式、設置場所その他水上標識について必要な事項は、公安委員会規則で定める。

(水上標識の移動等の禁止)

第十六条 何人も、みだりに前条第一項の規定により公安委員会が設置した水上標識を移動し、又はその効用を妨げる行為をしてはならない。

第五章 水路使用の許可

(水路使用の許可)

第十七条 水路において、次に掲げる行為をしようとする者は、当該行為に係る水路を管轄する警察署長(以下「所轄警察署長」という。)の許可(当該水路が二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可)を受けなければならない。

 工事又は作業

 花火大会

 前二号に掲げるもののほか、船舶交通の妨害となるおそれがある行為として公安委員会規則で定めるもの

2 前項の許可の申請があった場合において、当該申請に係る行為が次の各号のいずれかに該当するときは、所轄警察署長は、許可をしなければならない。

 船舶交通の妨害となるおそれがないと認められるとき。

 次項の規定により付された条件に従って行われることにより、船舶交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき。

 船舶交通の妨害となるおそれがあるが、公益上又は社会の慣習上やむを得ないと認められるとき。

3 所轄警察署長は、第一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、当該許可に係る行為が前項第一号に該当する場合を除き、当該許可に船舶交通の安全のために必要な条件を付することができる。

4 所轄警察署長は、第一項の規定による許可をした後において、船舶交通の安全のため特別の必要が生じたときは、前項の規定により付した条件を変更し、又は新たに条件を付することができる。

5 所轄警察署長は、第一項の規定による許可を受けた者が前二項の規定による条件に違反したとき、又は船舶交通の安全のため特別の必要が生じたときは、その許可を取り消し、又はその許可の効力を停止することができる。

6 所轄警察署長は、第三項又は第四項の規定による条件に違反した者について前項の処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、あらかじめ、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をしようとする理由を通知して、当該事案について弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。ただし、船舶交通の安全のため緊急やむを得ない場合は、この限りでない。

7 第一項の規定による許可を受けた者は、当該許可の期間が満了したとき又は第五項の規定により当該許可が取り消されたときは、速やかに水路を原状に回復する措置を講じなければならない。

8 第四項の規定による条件の変更及び新たな条件の付加並びに第五項の規定による許可の取消し及び効力の停止については、東京都行政手続条例(平成六年東京都条例第百四十二号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。

(許可の手続等)

第十八条 前条第一項の規定による許可を受けようとする者は、公安委員会規則で定める事項を記載した申請書を所轄警察署長に提出しなければならない。

2 所轄警察署長は、前条第一項の規定による許可をしたときは、許可証を交付しなければならない。

3 前項の規定による許可証の交付を受けた者で、当該許可証の記載事項に変更が生じたときは、所轄警察署長に届け出て、許可証に当該変更に係る事項の記載を受けなければならない。

4 第二項の規定による許可証の交付を受けた者は、当該許可証を亡失し、滅失し、著しく汚損し、又は破損したときは、所轄警察署長に許可証の再交付を申請することができる。

5 第一項の申請書の様式及び第二項の許可証の様式並びに前条第一項の申請の手続、第三項の届出の手続及び前項の申請の手続について必要な事項は、公安委員会規則で定める。

第六章 マリーナ事業者

(事業の届出)

第十九条 都の区域内において、利用者の求めに応じてプレジャーボートを係留し、若しくは保管する事業又は賃貸その他の方法により提供する事業(以下「マリーナ事業」という。)を営もうとする者は、マリーナ事業を開始しようとする日の十日前までに、設置するマリーナ事業の事業所(以下「事業所」という。)ごとに、公安委員会に届け出なければならない。

2 前項の規定による届出をした者は、当該届出に係る事項に変更が生じたとき又は当該届出に係るマリーナ事業を廃止したときは、その日から起算して十日以内に、その旨を公安委員会に届け出なければならない。

3 前二項に規定する届出の方法その他必要な事項は、公安委員会規則で定める。

(マリーナ事業者の遵守事項)

第二十条 マリーナ事業を営む者(以下「マリーナ事業者」という。)は、次に掲げる措置を講じなければならない。

 マリーナ事業者が利用者の求めに応じて係留し、若しくは保管するプレジャーボート又は賃貸その他の方法により提供するプレジャーボートを利用する者(以下「プレジャーボート利用者」という。)に対し、第十一条第十二条第十四条及び第二十三条に規定する事項を遵守するよう指導すること。

 前号に掲げる指導内容を記載した掲示物を作成し、事業所の見やすい場所に掲示すること。

 プレジャーボート利用者に対し、気象及び海上の状況その他安全な航行に必要な情報を提供すること。

 プレジャーボートの操縦に当たって、法令で資格を必要とするときは、当該資格の有無を確認し、当該資格を有しない者にはプレジャーボートを利用させないこと。

 船舶の航行による人の死傷又は物の損壊(以下「事故」という。)が発生した場合において直ちに利用できるような方法で、救命浮環及びロープを事業所に備えておくこと。

 プレジャーボート利用者の氏名、年齢、性別及び連絡先並びに操縦免許証番号、船舶登録番号及び航行期間を記載した名簿を作成し、事業所に備えておくこと。

(指示)

第二十一条 公安委員会は、マリーナ事業者が前条による措置を講じていないと認めるときは、当該マリーナ事業者に対し、相当の期限を定めて、当該措置を講ずべきことを指示することができる。

(報告及び立入り)

第二十二条 公安委員会は、この条例の施行に必要な限度において、マリーナ事業者に対し、その業務に関して報告又は資料の提出を求めることができる。

2 警察職員は、この条例の施行に必要な限度において、事業所その他の施設に立ち入り、書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問することができる。

3 前項の規定により警察職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

4 第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

第七章 雑則

(事故発生時の措置)

第二十三条 水上において、事故が発生したときは、当該事故の当事者である船舶の操縦者その他乗組員は、直ちに負傷者を救護し、水上における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該船舶の操縦者(操縦者が死亡し、又は負傷したためやむを得ない場合は、その他乗組員。次項において同じ。)は、遅滞なく当該事故の概要及び講じた措置について警察官に通報しなければならない。

2 前項後段の規定にかかわらず、当該船舶の操縦者は、港則法第二十四条による報告又は海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和四十五年法律第百三十六号)第三十八条第一項、第二項若しくは第五項、第四十二条の二第一項第四十二条の三第一項若しくは第四十二条の四の二第一項の規定による通報をしたときは、警察官に通報することを要しない。

3 前二項に規定する場合のほか、船舶の操縦者は、水上における事故の発生を知ったときは、速やかに警察官に通報しなければならない。

(令三条例九八・一部改正)

(経過措置)

第二十四条 この条例の規定に基づき公安委員会規則を制定し、又は改廃するときは、その公安委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

(委任)

第二十五条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関して必要な事項は、公安委員会規則で定める。

第八章 罰則

(罰則)

第二十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 第十二条の規定に違反して小型船舶を操縦した者で、その操縦をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な操縦ができないおそれがある状態をいう。)にあったもの

 第十四条の規定に違反して小型船舶を操縦した者

 第二十三条第一項前段に規定する必要な措置を講じなかった者

2 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 第十五条第一項の規定により公安委員会が設置し、及び管理する水上標識による船舶の航行の制限又は禁止に違反して船舶を操縦した者

 第十六条の規定に違反した者

 第十七条第一項の規定に違反した者

 第十七条第三項の規定により所轄警察署長が付し、又は同条第四項の規定により所轄警察署長が変更し、若しくは新たに付した条件に違反した者

3 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 第十二条の規定に違反して小型船舶を操縦した者で、その操縦をした場合において身体に公安委員会規則で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの

 第十七条第七項の規定に違反した者

4 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

 第十三条第一項の規定による警察官の検査を拒み、又は妨げた者

 第十九条第一項の規定による届出をせずにマリーナ事業を営んだ者又はマリーナ事業の開始について虚偽の届出をした者

 第十九条第二項の規定による変更事項の届出をせずにマリーナ事業を営んだ者又は変更事項について虚偽の届出をした者

 第二十一条の規定による指示に従わなかった者

 第二十二条第一項の規定による報告若しくは資料の提出を拒み、若しくは同項の規定による報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同条第二項の規定による当該職員の質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

 第二十三条第一項後段に規定する通報をしなかった者

5 第十八条第三項の規定に違反した者は、十万円以下の罰金に処する。

(両罰規定)

第二十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第二項第三号若しくは第四号同条第三項第二号同条第四項第二号若しくは第三号又は同条第五項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、同条の罰金刑を科する。

(施行期日)

1 この条例は、平成三十年七月一日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行前にこの条例による改正前の東京都水上取締条例の規定によりなされた公安委員会の命令、許可の取消し及び変更、警察署長の許可(この条例の施行前になされた申請に係るこの条例の施行後における許可を含む。)、警察署長に対する届出並びに警察官の指示、信号、承認、指揮及び命令の効力については、なお従前の例による。

3 この条例の施行の際、現にマリーナ事業を営んでいる者については、この条例第十九条第一項に規定するマリーナ事業を営もうとする者とみなして、同項の規定を適用する。この場合において、同項中「マリーナ事業を開始しようとする日の十日前」とあるのは「平成三十年八月三十一日」とする。

4 この条例の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(準備行為)

5 マリーナ事業の営業に関し必要な届出その他の手続は、この条例の施行前においても行うことができる。

(令和三年条例第九八号)

この条例は、公布の日から施行する。

東京都水上安全条例

平成30年3月30日 条例第46号

(令和3年10月20日施行)

体系情報
第16編 察/第9章
沿革情報
平成30年3月30日 条例第46号
令和3年10月20日 条例第98号