○東京都中小企業・小規模企業振興条例
平成三〇年一二月二七日
条例第一一七号
東京都中小企業・小規模企業振興条例を公布する。
東京都中小企業・小規模企業振興条例
東京は、世界有数の経済都市であり、日本の首都として、我が国の経済を支えている。政治、経済、文化等の諸機能が高密度に集積した都市部だけでなく、自然に恵まれ、一層の産業発展の可能性を有する多摩地域や島しょ地域があり、それぞれの特色を生かした事業活動が活発に行われている。
これまで、東京の中小企業及び小規模企業は、たゆまぬ努力と創意工夫により培われた高度な技術やサービス提供の力を基礎として、多様な事業活動を展開し、地域社会を活性化させ、雇用の場を創出するとともに、都民の暮らしや地域の経済を支える上で重要な役割を果たしてきた。
しかし、少子高齢化や人口構造の変化、さらには経済活動の国際化、科学技術の進展等により、経営環境が急速に変化する中で、中小企業及び小規模企業は、様々な課題を解決しなければならない状況に直面している。
このため、東京が、将来にわたり日本の各地域と共存共栄の関係に立ち、持続的に成長する都市として、国際的にも存在感を示し続けるためには、東京の特徴である多様性を踏まえ、中小企業者及び小規模企業者による経営の改善及び向上に向けた意欲的な取組に対し、的確な支援を行うことにより、その振興を図ることが必要である。
ここに、中小企業及び小規模企業の振興を都政の重要課題として位置付け、施策を総合的に推進するため、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、中小企業(小規模企業を含む。以下同じ。)の振興について、基本理念を定めるとともに、東京都(以下「都」という。)の施策の基本方針並びに都及び中小企業者の責務並びにその他の関係者の役割を明らかにすることにより、中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって都の経済の持続的な発展及び都民生活の向上に寄与することを目的とする。
一 中小企業者 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する中小企業者をいう。
二 中小企業関係団体 商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会、労働団体その他中小企業に関する団体をいう。
三 金融機関等 銀行、信用金庫、信用協同組合その他金融業を行う者及び信用保証協会をいう。
四 大企業者 中小企業者以外の事業者(会社及び個人に限る。)をいう。
五 大学等 大学、高等専門学校その他教育研究機関をいう。
(基本理念)
第三条 中小企業の振興は、中小企業者による経営の改善及び向上を図るための自主的な努力を促進することを旨として推進されなければならない。
2 中小企業の振興は、中小企業者が多様な分野における特色ある事業活動を通じて、地域経済の活性化を促進し、就業の機会を増大させる等地域社会の発展及び地域住民の生活の向上に貢献する重要な存在であるという認識の下に推進されなければならない。
3 中小企業の振興は、都、中小企業者、中小企業関係団体、金融機関等、大企業者、大学等、区市町村(特別区及び市町村をいう。以下同じ。)等が相互に連携し、及び協力することにより推進されなければならない。
4 小規模企業の振興は、小規模企業者(中小企業者のうち、中小企業基本法第二条第五項に規定する小規模企業者をいう。)の経営の規模及び形態を踏まえて、その経営資源の有効な活用が図られるとともに、多様な主体との連携及び協力により、その事業の持続的な成長発展につながるように推進されなければならない。
(都の責務及び施策の基本方針)
第四条 都は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、中小企業の振興に関する施策を総合的に実施する責務を有する。
2 都は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業の振興に関する施策を実施するものとする。
一 中小企業の経営基盤の強化及び事業承継の円滑化を図ること。
二 中小企業の創業の促進を図ること。
三 中小企業の販路開拓の促進を図ること。
四 中小企業の国際的視点に立った事業展開の促進を図ること。
五 中小企業の資金調達の円滑化を図ること。
六 中小企業の人材の確保及び育成を図ること。
七 中小企業における働きやすい職場環境の整備の促進を図ること。
八 中小企業における新たな技術の開発及びサービスの創出並びに知的財産の保護及び活用の促進を図ること。
九 産業集積、自然環境等の地域の特性及び資源を生かした中小企業の事業活動の促進を図ること。
(中小企業者の責務)
第五条 中小企業者は、基本理念にのっとり、経済的社会的環境の変化に即応してその事業の成長発展を図るため、自主的にその経営の改善及び向上を図るよう努めるものとする。
2 中小企業者は、人材の育成及び雇用環境の整備に努めるものとする。
(中小企業関係団体の協力)
第六条 中小企業関係団体は、基本理念にのっとり、中小企業の経営の改善及び向上に対して、主体的かつ積極的に取り組むとともに、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関等の協力)
第七条 金融機関等は、基本理念にのっとり、中小企業に対し、資金の円滑な供給、経営の支援その他の必要な協力を行うとともに、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(大企業者の協力)
第八条 大企業者は、基本理念にのっとり、都民生活並びに地域の経済及び社会において重要な存在である中小企業の事業活動について理解を深めるとともに、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(大学等の協力)
第九条 大学等は、基本理念にのっとり、人材の育成並びに産学の連携を通じて中小企業者が行う新たな技術の開発及びサービスの創出に対する助言等を行うとともに、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(区市町村の協力)
第十条 区市町村は、基本理念にのっとり、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するとともに、自ら地域の特性等を生かした中小企業の振興に取り組むよう努めるものとする。
(都民の理解及び協力)
第十一条 都民は、中小企業の振興の重要性について理解を深めるとともに、都が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(中小企業者等の意見の反映)
第十二条 都は、中小企業の振興に関する施策を効果的に推進するため、中小企業の振興に関する施策の実施及び当該実施状況等の検証に当たっては、中小企業者、中小企業関係団体等の意見を聴き、施策に反映するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第十三条 都は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。