○東京都無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例
令和元年一二月二五日
条例第八一号
東京都無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例を公布する。
東京都無料低額宿泊所の設備及び運営の基準に関する条例
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 設備及び運営に関する基準(第四条―第三十二条)
第三章 雑則(第三十三条・第三十四条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この条例は、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号。以下「法」という。)第六十八条の五第一項の規定に基づき、東京都(以下「都」という。)における無料低額宿泊所の設備及び運営に関する基準を定めるものとする。
(用語の意義)
第二条 この条例において「無料低額宿泊所」とは、法第二条第三項第八号に規定する生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させる事業を行う施設であって、次の各号のいずれにも該当するものをいう。ただし、他の法令により必要な規制が行われているもの等、生計困難者のために、無料又は低額な料金で、簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他の施設を利用させることが当該事業の主たる目的でないことが明らかであるものを除く。
一 次のいずれかに該当するものであること。
イ 入居の対象者を生計困難者に限定していること(入居の勧誘を生計困難者に限定して行っていると認められる場合を含む。)。
ロ 入居者の総数に占める生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第六条第一項に規定する被保護者(以下この号において「被保護者」という。)の数の割合が、おおむね五十パーセント以上であり、かつ、居室の利用に関する契約が建物の賃貸借契約以外の契約であること。
ハ 入居者の総数に占める被保護者の数の割合が、おおむね五十パーセント以上であり、かつ、利用料(居室使用料及び共益費を除く。)を受領してサービスを提供していること(人的関係、資本関係等において当該施設と密接な関係を有する事業者がサービスを提供している場合を含む。)。
二 居室使用料が無料又は生活保護法第八条に規定する厚生労働大臣の定める基準(同法第十一条第一項第三号に規定する住宅扶助に係るものに限る。)に基づく額以下であること。
2 前項に規定するもののほか、この条例で使用する用語の意義は、法で使用する用語の例による。
(基本方針)
第三条 無料低額宿泊所は、入居者が地域において自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、現に住居を求めている生計困難者につき、無料又は低額な料金で、居室その他の設備を利用させるとともに、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスを適切かつ効果的に行うものでなければならない。
2 無料低額宿泊所は、入居者の意思及び人格を尊重し、常に当該入居者の立場に立ってサービスを提供するよう努めなければならない。
3 無料低額宿泊所は、原則として一時的な居住の場であることに鑑み、入居者の心身の状況、置かれている環境等に照らし、当該入居者による独立した生活の可能性について常に留意しなければならない。
4 無料低額宿泊所は、独立して日常生活を営むことができると認められる入居者に対し、当該入居者の希望、退居後に置かれることとなる環境等を勘案し、当該入居者の円滑な退居のための必要な援助に努めなければならない。
5 無料低額宿泊所は、地域との結び付きを重視した運営を行い、都、特別区及び市町村(以下「区市町村」という。)、生計困難者の福祉を増進することを目的とする事業を行う者その他の保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に努めなければならない。
第二章 設備及び運営に関する基準
(職員等の資格要件)
第五条 施設長は、法第十九条第一項各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業等に二年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない。
2 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所の職員(施設長を除く。次条において同じ。)が、法第十九条第一項各号のいずれかに該当する者となるよう努めなければならない。
3 無料低額宿泊所の職員その他の無料低額宿泊所の運営に携わる者は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者であってはならない。
(施設長の責務)
第六条 施設長は、無料低額宿泊所の職員の管理、入退居に係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行わなければならない。
2 施設長は、当該無料低額宿泊所の職員にこの章の規定を遵守させるために必要な指揮命令を行わなければならない。
(職員の責務)
第七条 無料低額宿泊所の職員は、入居者からの相談に応じるとともに、適切な助言及び必要な支援を行わなければならない。
(勤務体制の確保等)
第八条 無料低額宿泊所は、入居者に対し、適切なサービスを提供できるよう職員の勤務体制を定めなければならない。
2 無料低額宿泊所は、職員の資質向上のための研修の機会を確保しなければならない。
3 無料低額宿泊所は、職員の処遇について、労働に関する法令の規定を遵守するとともに、職員の待遇の向上に努めなければならない。
(構造設備等の一般原則)
第九条 無料低額宿泊所の配置、構造及び設備は、日照、採光、換気等入居者の保健衛生に関する事項及び防災について十分考慮されたものでなければならない。
(規模)
第十条 無料低額宿泊所の規模は、五人以上の人員を入居させることができるものでなければならない。
(設備の基準)
第十一条 無料低額宿泊所の建物は、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)及び消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)の規定を遵守するものでなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、無料低額宿泊所は、消火器の設置及び自動火災報知設備等の防火に係る設備の整備に努めなければならない。
3 無料低額宿泊所は、次に掲げる設備を東京都規則(以下「規則」という。)で定める基準により設けなければならない。ただし、社会福祉施設等の設備を利用することにより、当該無料低額宿泊所の効果的な運営を期待することができる場合であって、かつ、入居者に対するサービスの提供に支障がないときは、設備の一部を設けないことができる。
一 居室
二 炊事設備
三 洗面所
四 便所
五 浴室
六 洗濯室又は洗濯場
4 無料低額宿泊所は、必要に応じ、次に掲げる設備その他の施設の円滑な運営に資する設備を設けなければならない。
一 共用室
二 相談室
三 食堂
(設備の専用)
第十二条 無料低額宿泊所の設備は、専ら当該無料低額宿泊所の用に供するものでなければならない。ただし、入居者に対するサービスの提供に支障がない場合は、この限りでない。
(運営規程)
第十三条 無料低額宿泊所は、次に掲げる施設の運営についての重要事項に関する規程(以下「運営規程」という。)を定めなければならない。
一 施設の目的及び運営の方針
二 職員の職種、員数及び職務の内容
三 入居定員
四 入居者に提供するサービスの内容及び利用料その他の費用の額
五 施設の利用に当たっての留意事項
六 非常災害対策
七 その他施設の運営に関する重要事項
2 無料低額宿泊所は、運営規程を定め、又は変更した場合は、知事に届け出なければならない。
(入退居)
第十四条 無料低額宿泊所は、入居予定者の入居に際しては、当該入居予定者の心身及び生活の状況等の把握に努めなければならない。
2 無料低額宿泊所は、入居者の心身の状況、入居中に提供することができるサービスの内容等に照らし、当該無料低額宿泊所において日常生活を営むことが困難となったと認められる入居者に対し、当該入居者の希望、当該入居者が退居後に置かれることとなる環境等を勘案し、当該入居者の状態に適合するサービスに関する情報の提供を行うとともに、当該適合するサービスのうち適切な他のサービスを受けることができるよう必要な援助に努めなければならない。
(入居申込者に対する説明、契約等)
第十五条 無料低額宿泊所は、居室の利用その他のサービスの提供の開始に際し、あらかじめ、入居申込者に対し、運営規程の概要、職員の勤務の体制、当該サービスの内容及び費用その他の入居申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行うとともに、文書により契約を締結しなければならない。この場合において、居室の利用に関する契約に併せてそれ以外のサービスの利用に関する契約を締結するときは、同一の文書により締結してはならない。
2 無料低額宿泊所は、前項前段の契約又は当該契約の更新において、契約期間及び解約に関する事項を定めなければならない。
3 前項の契約期間は、一年以内としなければならない。ただし、居室の利用に関する契約が建物の賃貸借契約(借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十八条第一項の規定による建物の賃貸借契約を除く。)である場合における当該居室の利用に関する契約の契約期間は、一年としなければならない。
4 無料低額宿泊所は、第二項の契約期間の満了前に、あらかじめ入居者の意向を確認するとともに、福祉事務所その他の都又は区市町村の関係機関と、当該入居者が継続して無料低額宿泊所を利用する必要性について協議しなければならない。
5 無料低額宿泊所は、第二項の解約に関する事項において、入居者の権利を不当に制限する条件を定めてはならない。
6 無料低額宿泊所は、第二項の解約に関する事項において、入居者が解約を申し入れた場合は速やかに当該契約を終了する旨を定めなければならない。
7 無料低額宿泊所は、第一項前段の契約又は当該契約の更新に際し、入居申込者又は更新申込者に対して、保証人を立てさせてはならない。
8 無料低額宿泊所は、入居申込者からの申出があった場合は、第一項の規定による文書の交付に代えて、当該入居申込者の同意を得て、同項前段の契約に際し、同項の重要事項及び第二項の事項を電子情報処理組織(無料低額宿泊所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この条において同じ。)と当該入居申込者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって規則で定めるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該無料低額宿泊所は、あらかじめ、当該入居申込者に対し、提供に用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による同意を得なければならない。
9 電磁的方法は、入居申込者が当該入居申込者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録を出力することにより文書を作成することができるものでなければならない。
(利用料の受領)
第十六条 無料低額宿泊所は、入居者から利用料として、次に掲げる費用(第七号の費用については、当該無料低額宿泊所が日常生活支援住居施設である場合に限る。)を規則で定める基準により受領することができる。
一 食事の提供に要する費用
二 居室使用料
三 共益費
四 光熱水費
五 日用品費
六 基本サービス費
七 入居者が選定する日常生活上の支援に関するサービスの提供に要する費用
(サービス提供の方針)
第十七条 無料低額宿泊所は、入居者の健康保持に努めるほか、当該入居者が安心して生き生きと明るく生活できるよう、その心身の状況や希望に応じたサービスの提供を行うとともに、生きがいをもって生活できるようにするための機会を適切に提供しなければならない。
2 無料低額宿泊所の運営は、入居者にとって当該無料低額宿泊所全体が一つの住居であることに鑑み、入居者が共用部分を円滑に使用できるよう配慮して行われなければならない。
3 無料低額宿泊所の運営は、入居者のプライバシーの確保に配慮して行われなければならない。
4 無料低額宿泊所は、入居者に対するサービスの提供に当たっては、当該入居者に対し、サービスの提供を行う上で必要な事項について、説明しなければならない。
(食事)
第十八条 無料低額宿泊所は、入居者に食事を提供する場合、量及び栄養並びに当該入居者の心身の状況及び嗜好を考慮した食事を、適切な時間に提供しなければならない。
(入浴)
第十九条 無料低額宿泊所は、一日に一回の頻度で、入居者に入浴の機会を提供しなければならない。ただし、やむを得ない事情がある場合は、あらかじめ、当該入居者に対し当該事情の説明を行うことにより、一週間に三回以上の頻度とすることができる。
(状況の把握)
第二十条 無料低額宿泊所は、原則として一日に一回以上、居室への訪問等の方法により、入居者の状況を把握しなければならない。
(定員の遵守)
第二十一条 無料低額宿泊所は、入居定員及び居室の定員を超えて入居させてはならない。ただし、災害その他のやむを得ない事情がある場合は、この限りでない。
(衛生管理等)
第二十二条 無料低額宿泊所は、入居者の使用する設備、食器等及び飲用に供する水について、衛生的な管理に努めるとともに、衛生上必要な措置を講じなければならない。
2 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所において感染症、食中毒又は害虫が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(日常生活に係る金銭管理)
第二十三条 入居者の金銭の管理は、原則として当該入居者本人が行うものとする。ただし、金銭の適切な管理を行うことに支障がある入居者であって、無料低額宿泊所による金銭の管理を希望するものに対し、当該無料低額宿泊所が、規則で定める基準により日常生活に係る金銭を管理することを妨げない。
(掲示及び公表)
第二十四条 無料低額宿泊所は、入居者の見やすい場所に、運営規程の概要、職員の勤務体制その他の入居者のサービスの選択に資すると認められる事項を掲示しなければならない。
2 無料低額宿泊所は、運営規程を公表するとともに、毎会計年度終了後三月以内に、貸借対照表、損益計算書等の収支の状況に係る書類を公表しなければならない。
(秘密保持等)
第二十五条 無料低額宿泊所の職員は、正当な理由なく、その業務上知り得た入居者の秘密を漏らしてはならない。
2 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所の職員であった者が、正当な理由なく、その業務上知り得た入居者の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
(広告)
第二十六条 無料低額宿泊所は、当該無料低額宿泊所について広告をする場合は、その内容が虚偽又は誇大なものでないようにしなければならない。
(苦情等への対応)
第二十七条 無料低額宿泊所は、入居者からのサービスの提供に関する苦情に迅速かつ適切に対応するために、窓口の設置その他の必要な措置を講じなければならない。
2 無料低額宿泊所は、前項の苦情を受け付けた場合は、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 無料低額宿泊所は、提供したサービスに関し、知事から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。この場合において、知事からの求めがあったときは、当該改善の内容を報告しなければならない。
4 無料低額宿泊所は、法第八十五条第一項の規定による運営適正化委員会が行う調査に可能な限り協力しなければならない。
(事故発生時の対応)
第二十八条 無料低額宿泊所は、入居者に対するサービスの提供により事故が発生した場合は、速やかに都、当該入居者の家族等に連絡を行うとともに、当該事故の状況及び処置についての記録その他必要な措置を講じなければならない。
2 無料低額宿泊所は、入居者に対するサービスの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
(非常災害対策)
第二十九条 無料低額宿泊所は、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を策定し、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、これらを定期的に職員に周知しなければならない。
2 無料低額宿泊所は、非常災害に備えるため、少なくとも一年に一回以上、定期的に避難訓練、救出訓練その他必要な訓練を行わなければならない。
(記録の整備)
第三十条 無料低額宿泊所は、設備、職員及び会計に関する記録を整備しなければならない。
2 無料低額宿泊所は、次に掲げる事項について、入居者に提供するサービスの状況に関する記録を整備し、当該入居者の契約終了の日(当該契約終了の日において当該記録に係る事象が完結していない場合にあっては、その完結の日)から五年間保存しなければならない。
一 提供した具体的なサービスの内容等
二 第二十七条第二項の苦情の内容等
三 第二十八条第一項の事故の状況及び処置
(サテライト型住居の設置等)
第三十一条 無料低額宿泊所は、本体となる施設(入居定員が五人以上十人以下のものに限る。以下この条において「本体施設」という。)と一体的に運営される附属施設であって、利用期間が原則として一年以下であるもの(入居定員が四人以下のものに限る。以下「サテライト型住居」という。)を設置することができる。
2 サテライト型住居は、本体施設からおおむね二十分で移動できる範囲に設置する等、入居者に対するサービスの提供に支障がないものとしなければならない。
3 一の本体施設が設置することができるサテライト型住居の数は、規則で定める基準を満たさなければならない。
4 無料低額宿泊所(サテライト型住居を設置するものに限る。次項において同じ。)の本体施設及びサテライト型住居の入居定員の合計は、規則で定める基準を満たさなければならない。
第三章 雑則
(適用除外)
第三十三条 この条例の規定は、八王子市の区域における無料低額宿泊所については、適用しない。
(委任)
第三十四条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附則