○東京都犯罪被害者等支援条例
令和二年三月三一日
条例第一七号
東京都犯罪被害者等支援条例を公布する。
東京都犯罪被害者等支援条例
目次
第一章 総則(第一条―第十条)
第二章 基本的な施策(第十一条―第二十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、犯罪被害者等支援に関し、基本理念を定め、並びに東京都(以下「都」という。)、都民、事業者及び民間支援団体の責務等を明らかにするとともに、犯罪被害者等支援の基本となる事項を定めることにより、犯罪被害者等支援を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等が受けた被害の回復又は軽減及び犯罪被害者等の生活の再建を図ること並びに犯罪被害者等を社会全体で支え、世界に開かれた国際都市として誰もが安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
一 犯罪等 犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
二 犯罪被害者等 犯罪等により被害を受けた者(以下「犯罪被害者」という。)及びその家族又は遺族をいう。
三 犯罪被害者等支援 犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、安心して暮らすことができるようにするための取組をいう。
四 二次的被害 犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の者や犯罪被害者等に接する行政機関の職員その他関係者による偏見に基づいた、又は理解若しくは配慮に欠ける言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛、身体の不調、名誉の毀損、私生活の平穏の侵害、経済的な損失その他の被害をいう。
五 再被害 犯罪被害者が更なる犯罪等により受ける被害をいう。
六 民間支援団体 犯罪被害者等早期援助団体(犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和五十五年法律第三十六号)第二十三条第一項の団体をいう。)その他犯罪被害者等支援を主たる目的として適切に行う民間の団体をいう。
(基本理念)
第三条 全て犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
2 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者が受けた被害の特性及び原因、二次的被害の有無等の犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じ、適切に行われるとともに、当該犯罪被害者等支援により二次的被害が生じることのないよう十分配慮して推進されなければならない。
3 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者等が安心して暮らすことができるよう、必要な支援が途切れることなく提供されることを旨として行われなければならない。
4 犯罪被害者等支援は、国、都、区市町村(特別区及び市町村をいう。以下同じ。)、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者による相互の連携及び協力の下に推進されなければならない。
(都の責務)
第四条 都は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、区市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者との適切な役割分担を踏まえ、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。
2 都は、区市町村が犯罪被害者等支援を総合的かつ計画的に推進することができるよう、必要な情報の提供及び助言その他の支援を行うものとする。
(都民の役割)
第五条 都民は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、二次的被害が生じることのないよう十分配慮するとともに、都が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第六条 事業者は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たっては二次的被害が生じることのないよう十分配慮するとともに、犯罪被害者等である従業員に対して必要な支援を行い、及び都が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(民間支援団体の役割)
第七条 民間支援団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等支援に関する専門的な知識及び経験を活用し、犯罪被害者等支援を推進するとともに、都が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(支援計画)
第八条 都は、犯罪被害者等支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(以下「支援計画」という。)を定めるものとする。
2 支援計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 犯罪被害者等支援に関する施策の基本的な考え方
二 犯罪被害者等支援に関する具体的な施策
三 前二号に掲げるもののほか、犯罪被害者等支援に関する施策を推進するために必要な事項
3 知事は、支援計画を定めようとするときは、あらかじめ都民等の意見を聴くものとする。
4 知事は、支援計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前二項の規定は、支援計画の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。
(総合的な支援体制の整備)
第九条 都は、国、区市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者と連携し、及び相互に協力して犯罪被害者等支援を推進するための総合的な支援体制を整備するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第十条 都は、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第二章 基本的な施策
(相談、情報の提供等)
第十一条 都は、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等支援に精通している者を紹介する等必要な施策を講ずるものとする。
(心身に受けた影響からの回復)
第十二条 都は、犯罪被害者等が心理的外傷その他の犯罪等により心身に受けた影響から早期に回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。
(安全の確保)
第十三条 都は、犯罪被害者等が再被害及び二次的被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、施設への入所による保護、一時保護、防犯に係る指導、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保その他の必要な施策を講ずるものとする。
(居住の安定等)
第十四条 都は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図り、並びに再被害及び二次的被害を防止するため、犯罪被害者等の一時的な利用のための住居の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(雇用の安定等)
第十五条 都は、犯罪被害者等の雇用の安定を図り、並びに二次的被害を防止するため、事業者に対し、犯罪被害者等が置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深める啓発を行う等必要な施策を講ずるものとする。
(経済的負担の軽減)
第十六条 都は、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、経済的な助成に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講ずるものとする。
(緊急支援の実施)
第十七条 都は、犯罪等により死傷者が多数に上る事案その他の重大な事案が都の区域内(以下「都内」という。)で発生した場合において、当該事案による犯罪被害者等に対し支援を行う必要があると認めるときは、民間支援団体その他関係機関と協力して、当該事案に対応するための支援の体制を整え、必要な緊急支援を実施するものとする。
(都内に住所を有しない者への支援)
第十八条 都は、都内に住所を有しない者が都内で発生した犯罪等により被害を受けた場合には、民間支援団体その他関係機関と連携し、当該犯罪等による犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う等必要な施策を講ずるものとする。
(都民の理解の増進)
第十九条 都は、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等支援の必要性及び二次的被害が生じることのないよう配慮することの重要性について都民の理解を深めるため、広報、啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。
(民間支援団体に対する支援)
第二十条 都は、民間支援団体が適切かつ効果的に犯罪被害者等支援を推進することができるよう、犯罪被害者等支援に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成)
第二十一条 都は、犯罪被害者等支援の充実を図るため、犯罪被害者等支援を担う人材(以下「支援従事者」という。)を育成するための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(個人情報の適切な管理)
第二十二条 都は、犯罪被害者等支援における個人情報の重要性を認識し、犯罪被害者等及びその関係者の個人情報を適切に管理しなければならない。
2 都は、支援従事者に対し、前項の規定に準じて犯罪被害者等及びその関係者の個人情報を適切に管理するよう求めるものとする。
附則
1 この条例は、令和二年四月一日から施行する。
2 この条例の施行の際現に存する支援計画は、第八条第一項の規定により定められたものとみなす。