○東京都女性自立支援施設の設備及び運営の基準に関する条例
令和六年三月二九日
条例第五五号
東京都女性自立支援施設の設備及び運営の基準に関する条例を公布する。
東京都女性自立支援施設の設備及び運営の基準に関する条例
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 設備及び運営に関する基準(第五条―第二十二条)
第三章 雑則(第二十三条―第二十五条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この条例は、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号。以下「法」という。)第六十五条第一項の規定に基づき、東京都における女性自立支援施設(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(令和四年法律第五十二号)第十二条第一項に規定する女性自立支援施設をいう。以下同じ。)の設備及び運営に関する基準(以下この章において「基準」という。)を定めるものとする。
(基準の意義)
第二条 この基準は、女性自立支援施設の入所者が、明るく衛生的な環境において、女性の人権に関する高い識見と専門性を有する職員により、心身ともに健やかに、かつ、自立に向けて支援されることを保障するものとする。
(基準の向上)
第三条 知事は、基準を常に向上させるよう努めるものとする。
2 女性自立支援施設は、基準を超えて、常にその設備及び運営を向上させなければならない。
3 基準を超えて設備を有し、又は運営する女性自立支援施設は、基準を理由として、設備又は運営を低下させてはならない。
(女性自立支援施設の基本方針)
第四条 女性自立支援施設は、入所者に対し、健全な環境の下で、女性の人権に関する高い識見と専門性を有する職員により、社会において入所者の置かれた状況に応じた自立した生活を送るための支援を含め、適切な支援を行うよう努めなければならない。
第二章 設備及び運営に関する基準
(職員配置の基準)
第五条 女性自立支援施設は、次に掲げる職員を置かなければならない。ただし、調理業務の全部を委託する女性自立支援施設にあっては、第三号の職員を置かないことができる。
一 施設長
二 入所者の自立支援(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律第十二条第一項に規定する自立支援をいう。以下同じ。)を行う職員
三 栄養士又は調理員
四 看護師又は心理療法担当職員
五 事務員
六 女性自立支援施設のその他の業務を行うために必要な職員
2 女性自立支援施設の職員は、専ら当該女性自立支援施設の職務に従事する者でなければならない。ただし、入所者の支援に支障がない場合は、この限りでない。
3 第一項各号に規定する職員の員数については、東京都規則(以下「規則」という。)で定める基準を満たさなければならない。
(施設長の資格要件)
第六条 施設長は、女性自立支援施設を運営するに当たって女性の人権に関する高い識見と専門性を有する者であって、次に掲げる要件を満たすものでなければならない。
一 法第十八条第一項に規定する社会福祉主事の資格を有する者又は法第二条第一項に規定する社会福祉事業若しくは困難な問題を抱える女性への支援に関する活動に三年以上従事した者であること。
二 罰金以上の刑に処せられたことのない者であること。
三 心身ともに健全な者であること。
(構造設備の一般原則)
第七条 女性自立支援施設の配置、構造及び設備は、日照、採光、換気その他の入所者の保健衛生に関する事項、入所者に対する危害の防止及び防災について十分考慮されたものでなければならない。
(設備の基準)
第八条 女性自立支援施設の建物(入所者の日常生活のために使用しない附属の建物を除く。)は、耐火建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二に規定する耐火建築物をいう。)又は準耐火建築物(同条第九号の三に規定する準耐火建築物をいう。)としなければならない。ただし、知事が、火災予防、消火活動等に関し専門的知識を有する者の意見を聴いて、規則で定める要件を満たし、かつ、火災に係る入所者の安全性が確保されていると認めた女性自立支援施設の建物の場合は、この限りでない。
2 女性自立支援施設は、次に掲げる設備を設けなければならない。
一 居室
二 静養室
三 食堂
四 集会室兼談話室
五 浴室
六 洗面所
七 便所
八 医務室
九 調理室
十 宿直室
十一 事務室
十二 相談室
十三 作業室
十四 洗濯室
十五 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
3 前項各号に掲げる設備については、規則で定める基準を満たさなければならない。
(居室の定員)
第九条 一の居室の定員は、原則一人とする。
2 女性自立支援施設の入所の対象となる者が監護すべき児童を同伴する場合等、入所者の自立支援を行うために必要と認められる場合は、前項の規定にかかわらず、一の居室の定員を二人以上とすることができる。
(自立支援等)
第十条 女性自立支援施設は、入所者の意向及び私生活を十分に尊重して、入所者の心身の健康回復及び生活(就労及び就学を含む。)に関する支援等を行わなければならない。
2 女性自立支援施設は、入所者の個の尊厳を保ち、心身の状況、本人の意思、希望及び自立に向けた意向を十分に踏まえた上で、施設における基本的な共同生活の考え方を示さなければならない。
3 女性自立支援施設は、入所者の自立支援を行うため、入所者の意向を踏まえ、入所者ごとに個別支援計画を作成しなければならない。
(保健衛生)
第十一条 女性自立支援施設は、居室その他入所者が常時使用する設備について、常に清潔にしなければならない。
2 女性自立支援施設は、入所者の使用する食器その他の設備及び飲用に供する水について、衛生的な管理に努め、衛生上必要な措置を講じるとともに、医薬品、衛生材料及び医療機械器具の管理を適正に行わなければならない。
3 女性自立支援施設は、当該女性自立支援施設において感染症又は食中毒が発生し、又はまん延しないように、職員に対し、感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修並びに感染症の予防及びまん延の防止のための訓練を定期的に実施しなければならない。
4 女性自立支援施設は、入所者の希望等を勘案し、清潔を維持できるよう入浴させ、又は清しきしなければならない。
(食事の提供)
第十二条 食事は、食品の種類及び調理方法について栄養並びに入所者の身体的状況及び嗜好を考慮したものでなければならない。
2 調理は、あらかじめ作成された献立に従って行わなければならない。
(入所者の健康診断)
第十三条 女性自立支援施設は、入所者について、毎年、定期に二回以上健康診断を行わなければならない。
(給付金として支払を受けた金銭の管理)
第十四条 女性自立支援施設は、当該女性自立支援施設の設置者が入所者に係る厚生労働大臣が定める給付金(以下この条において「給付金」という。)の支給を受けたときは、給付金として支払を受けた金銭を規則に定めるところにより管理しなければならない。
(帳簿の整備)
第十五条 女性自立支援施設は、設備、職員、会計及び入所者の支援の状況に関する帳簿を整備しなければならない。
(秘密保持等)
第十六条 女性自立支援施設の職員は、正当な理由がなく、その業務上知り得た入所者又はその家族の秘密を漏らしてはならない。
2 女性自立支援施設は、職員であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た入所者又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
(苦情への対応)
第十七条 女性自立支援施設は、その行った支援に関する入所者からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口の設置その他の必要な措置を講じなければならない。
2 女性自立支援施設は、当該女性自立支援施設の行った支援に関し、知事から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
3 女性自立支援施設は、法第八十三条に規定する運営適正化委員会が行う法第八十五条第一項の規定による調査に協力するよう努めなければならない。
(非常災害対策)
第十八条 女性自立支援施設は、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的計画(第二十条第四項において「非常災害計画」という。)を策定しなければならない。
2 女性自立支援施設は、定期的に避難訓練、救出訓練その他必要な訓練を行わなければならない。
(安全計画の策定等)
第十九条 女性自立支援施設は、入所者の安全の確保を図るため、当該女性自立支援施設の設備の安全点検、職員等に対する施設外での活動、取組等を含めた女性自立支援施設での生活その他の日常生活における安全に関する指導、職員等の研修及び訓練その他女性自立支援施設における安全に関する事項についての計画(以下この条及び次条第四項において「安全計画」という。)を策定し、当該安全計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 女性自立支援施設は、職員に対し、安全計画について周知するとともに、前項の研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 女性自立支援施設は、定期的に安全計画の見直しを行い、必要に応じて安全計画の変更を行うものとする。
(業務継続計画の策定等)
第二十条 女性自立支援施設は、感染症や非常災害の発生時において、入所者に対する支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下この条において「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 女性自立支援施設は、職員に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 女性自立支援施設は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
4 業務継続計画は、非常災害計画及び安全計画と一体のものとして策定することができる。
(業務の質の評価等)
第二十一条 女性自立支援施設は、その業務の質の評価を自ら行うとともに、定期的に外部の者による評価を受け、結果を公表し、常に改善を図らなければならない。
(関係機関との連携)
第二十二条 女性自立支援施設は、女性相談支援センター、女性相談支援員、困難な問題を抱える女性への支援に関する活動を行う民間の団体のほか、福祉事務所(法に規定する福祉に関する事務所をいう。)、児童相談所、児童福祉施設(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項に規定する児童福祉施設をいう。)、保健所、医療機関、職業紹介機関(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第二条に規定する職業紹介機関をいう。)、職業訓練機関、教育機関、都道府県警察、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第十三条に規定する日本司法支援センターをいう。)、配偶者暴力相談支援センター(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第三条第一項に規定する配偶者暴力相談支援センターをいう。)、母子・父子福祉団体その他の関係機関及び母子・父子自立支援員、民生委員、児童委員、保護司その他の関係者と密接に連携しなければならない。
第三章 雑則
(電磁的記録)
第二十三条 女性自立支援施設及びその職員は、作成、保存その他これらに類するもののうち、この条例において書面(書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。以下この条において同じ。)で行うことが規定されている又は想定されるものについては、書面に代えて、当該書面に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)により行うことができる。
(適用除外)
第二十四条 この条例の規定は、八王子市の区域における女性自立支援施設(当該区域に存する東京都が設置する女性自立支援施設を除く。)については、適用しない。
(委任)
第二十五条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、令和六年四月一日から施行する。
(東京都婦人保護施設の設備及び運営の基準に関する条例の廃止)
2 東京都婦人保護施設の設備及び運営の基準に関する条例(平成二十四年東京都条例第百十五号)は、廃止する。
(設備の基準に関する経過措置)
4 平成十四年四月一日前から存する女性自立支援施設の建物については、第八条第一項の規定は、適用しない。
(居室の定員に関する経過措置)
5 この条例の施行前に設置された女性自立支援施設における居室の定員については、第九条の規定にかかわらず、当分の間、旧条例第九条によることができる。ただし、女性自立支援施設を改築し、又は増築する場合は、この限りでない。